サークリサ®をお使いになる
患者さん、ご家族の皆さまへ
サークリサ®はどんな薬?
サークリサ®は、特定の分子(蛋白質)と結合して異物を除去する「抗体」の性質を利用してつくられた「抗体医薬品」です。
抗体医薬品は、攻撃する細胞の目印が決まっているため、がん細胞をより効率的に排除できる、という特徴があります。
サークリサ®の作用について
治療の対象となる患者さんは?
サークリサ®は、薬物療法※を受けたことがある多発性骨髄腫の患者さんのうち、次のような方に使われます。
※少なくとも2つの標準的な治療薬を含む薬物療法
再発
治療の効果が得られたあとに
再び発症した患者さん
難治性
治療を受けたものの
十分な効果が得られなかった患者さん
以下のような方は、サークリサ®による治療を
受けることができない場合があります。
- 以前、お薬による治療を受けて、 過敏症を起こしたことがある患者さん
- 妊娠している、または妊娠の可能性のある患者さん
- 授乳中の患者さん
サークリサ®による治療は?
サークリサ®は、点滴で投与されるお薬です。
サークリサ®による治療は、効果を高めるために、 他の多発性骨髄腫のお薬と併用して行います。
参考:併用するお薬について
ポマリドミド
体内の免疫のはたらきを調整する「免疫調節薬」と呼ばれる種類のお薬で、骨髄腫細胞の増殖を抑えるはたらきがあります。
デキサメタゾン
合成副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)と呼ばれる種類のお薬で、抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用など、さまざまなはたらきがあります。
避妊について
妊娠する可能性がある方は、サークリサ®による治療中および治療終了後の一定期間、
適切な方法で避妊を行うようにしてください。
治療の流れは?(投与日の流れ、点滴時間)
サークリサ®は、28日(4週間)を1サイクルとして、1サイクル目は1週間ごと、
2サイクル目以降は2週間ごとの投与を繰り返し行 って治療を続けます※。
※患者さんの状態によっては、治療スケジュールが変更されることがあります。そのような場合は、
主治医の指示に従ってください。
- サークリサ®は、病院で点滴により投与されます。特にインフュージョン リアクションに注意して行われます。
- サークリサ®の点滴時間は、患者さんの体重や投与回数によって異なります。
サークリサ®の副作用は?
(サークリサ®・ポマリドミド・デキサメタゾンの併用療法時)
- サークリサ®による治療中は、サークリサ®だけでなく併用しているお薬の副作用があらわれる可能性があります。
- 副作用のあらわれ方には個人差があります。治療中はご自身の体調に注意を払い、気になる症状があったら、主治医、看護師、薬剤師に伝えましょう。
- 副作用が起きても、早めに対処することで、軽い症状ですむ場合があります。 予防や対策についても、確認しておきましょう。
注意していただきたい副作用
1.インフュージョン リアクション(薬剤を注入するときに起こるアレルギー様反応)
- お薬を点滴するときにみられる過敏反応の1つで、アレルギーのような症状があらわれます。
- サークリサ®の点滴を初めて受けたときにみられることが多く、そのほとんどが、点滴中または点滴終了後 24時間以内にみられます。
ただし2回目以降にみられることもあります。 - 症状の程度は、多くが軽症か中等症で、その日のうちに回復することがほとんどですが、まれに重症に なることがあるので注意が必要です。
予防と対策
前投与
- サークリサ®の点滴前に、インフュージョン リアクションを軽減するためのお薬が投与されます(前投与)。
- ただし、こうしたお薬を使用しても、インフュージョン リアクションを完全に防ぐことはできません。異常を感じたら、すぐに主治医や看護師に伝えることがとても大切です。
2.骨髄抑制(血液細胞の減少)
- 骨髄のはたらきが低下することで、血液細胞(好中球、 リンパ球、赤血球、血小板)が減少することがあり ます。
血液細胞の減少とからだへの影響
好中球・リンパ球の減少
免疫力が低下して、肺炎などの重い感染症や日和見感染※にかかりやすくなる。
赤血球の減少
赤血球の中のヘモグロビンが減少して貧血の状態になる。
血小板の減少
血が止まりにくくなったり、出血しやすくなる。
※日和見感染:健康な人には害のないような弱い細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどが原因で発症する感染症のことをいいます。
- これらの状態は、血液検査によって確認します。
予防と対策
- 好中球を増やすお薬(G-CSF製剤※※)や、感染症の原因を 抑えるお薬(抗菌薬など)が使用されることがあります。
- 感染症にかからないように、うがいや手洗いを心がけることも 大切です。
※※G-CSF:顆粒球コロニー刺激因子
3.感染症
- 治療中は、「肺炎」や「かぜ症候群(上気道感染)」、「気管支炎」などの 感染症にかかりやすくなります。
- なかでも、特に注意していただきたいのが「肺炎」です。
肺炎は放っておくと重症化して治療が難しくなるため、 早期のうちに適切な治療を行うことがとても大切です。
予防と対策
- 感染症対策として「インフルエンザワクチン」や「肺炎球菌ワクチン」 の接種を受けておくことが勧められています。 詳しくは主治医にご相談ください。
4.腫瘍崩壊症候群
- 治療によって、骨髄腫細胞が急速に壊され、細胞に含まれている成分が体内にたまることで起きる副作用です。
- 体内の尿酸が増える、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質のバランスが崩れる、腎機能が障害されて尿量が減るなど、さまざまな症状を引き起こします。
- 通常、治療開始から12~72時間以内に起こります。
予防と対策
- 予防には、水分の補給がとても大切です。
また、お薬で予防することもあります。
その他、多くみられる副作用
- これらの副作用は、患者さんからの報告が早期発見、早期対応の決め手になります。
- つらい場合は我慢せず、早めに主治医や看護師に伝えてください。
予防と対策
- 嘔吐や下痢が続く場合は、脱水状態にならないよう水分補給 することが大切です。
- 必要に応じて、症状を抑えるお薬(吐き気止め、下痢止めなど ) を使うことがあります。
治療中の過ごし方は?
感染症にかからないために、
清潔を心がけるとともにからだを冷やさないように注意しましょう。
- せっけんを使ってこまめに手を洗う。
- 速乾式アルコール液で手や指を消毒する。
- うがいや歯磨きをして、口の中を清潔に保つ。
- 寒いときは、上着を1枚多く羽織るなどしてからだを冷やさない。
- 傷をつくらないように、ヒゲを剃るときは、電気シェーバーを使う。
- 庭木の手入れをするときは、手袋をつけて皮膚を守る。
- 食事は調理後すぐに食べ、 食中毒にならないように気をつける。
メモ
治療中は、病気や治療の影響で免疫力が低下し、感染症にかかりやすい状態になっています。
体調管理に気を配り、発熱などの症状があらわれた場合は、早めに主治医に相談することが大切です。
がんと疲労(がん関連疲労)について
がんに関連した疲労(がん関連疲労)は、健康な人が感じる疲労と同じではありません。
まずは、起こりやすい時間帯やそのときの状態を記録して、主治医や看護師に伝えましょう。
- 疲労感が弱い時間帯に、一日の中で 優先度が高いと思う活動をする。
- 疲労感が強いときには、身の回りのことを 家族や身近な人に手伝ってもらう。
- 活動と休息のバランスをとることを意識しながら、少しずつこまめに休息をとる。
- 楽な姿勢で休む(クッション、抱き枕などを 使って楽な姿勢を見つける)。
- 可能な範囲で、ウォーキングやヨガ、体操などの有酸素運動を行う。
- 深呼吸や音楽、アロマテラピーなど、自分がリラックスできる方法を取り入れる。
メモ
「がん関連疲労」は、がんやがんの治療の副作用、がんにともなう症状(痛み、貧血、不安、不眠)などによって起こります。
がん関連疲労は、客観的に評価するための検査法がなく、他の人にはわかりにくい症状の1つです。
患者さん自身が伝えることが大切ですので、疲れや倦怠感が続く場合は、気づいたことをノートに記録し、主治医や看護師に伝えるようにしましょう。
骨折をしないように、転倒やケガをしないことが大切です。
無理な姿勢をとらないようにしましょう。
- めまいによる転倒などを避けるため、 急に立ち上がらない。
- ゆっくりと動き始めるようにする。
- 重い荷物を持ったり、担いだりしない。
- からだをねじったり、中腰の姿勢になるのを避ける。
- 歩きやすく、かかとがしっかりとした靴をはく。(つっかけやサンダルなどは転びやすいので使わない)
- 骨を健康に保つため、適度な運動を取り入れる。
メモ
骨病変が進むと、少しの力でも骨折しやすくなります。
腰や背中、手足の骨などに大きな力が加わらないように注意しましょう。
コルセットをつけると、骨への負担が分散されるので、骨の保護に役立つことがあります。
こんな症状がみられたら、 すぐに主治医に連絡してください
- 熱っぽいときは、必ず体温を測っておきましょう。
-
症状がいつごろ出たか、その後の症状の変化についても、 記録をつけておきましょう。
「わたしの通信ノート」をご利用ください。
サークリサ®の作用について
サークリサ®の2つのはたらき
サークリサ®は、骨髄腫細胞の表面に多く発現している分子(CD38)を目印に、「直接作用」と「間接作用」の2つのはたらきによって骨髄腫細胞の増殖を抑制します。
サークリサ®による多発性骨髄腫の
治療を受けられる方へ
治療の経過を伝える わたしの通信ノート
気になる症状の相談や、治療を進めていくうえで不安なこと、知りたいこと、感じたことを先生や看護師、薬剤師にお伝えいただくためにお役立ていただけます。
日々の健康状態を伝えることが、よりよい治療を続けるための助けとなります。
まだお持ちでない方は、主治医の先生にお問い合わせください。